異種武闘大会――――それは言葉のとおり、騎士や魔術師がそれぞれの職種を超えて己の技能と強さを競い合うための大会だ。

 普通の訓練や武闘大会では、同じ職種の者同士を戦わせるものだけど、実際の戦で『騎士だから! 魔術師だから不利だ! 戦えない』というのは通用しない。だからこれは、どんな相手にも怯まず戦う経験を積ませるための催しだ。

 数百年前にスタートして以降、不定期に催されているのだけど、お父様が帝位についてからはまだ一度も開かれていない。それを今、このタイミングで開こうと考えたのだ。


(すんごい思いつきで言ったけど、実はめちゃくちゃいい案なんじゃない?)


 時間もお金もさしてかからないし。効率がいいし。騎士や魔術師のやる気を引き出すのに最適だし。ライナスは実際のところ皇配にふさわしいのか、他に皇配候補となれるような男性がいないのか――――エレン様が他の人と比べて優れているか、確かめられる機会だからだ。魔術師としては最強でも、騎士と比べたら劣る――――なんてこともあるかもしれないし。いや、エレン様が誰かに負ける姿なんて見たくないし、なにがあってもわたしにとってはエレン様が最強なんだけど。