「まあね。ヴィヴィアンの推し活が恋愛感情を元にしてるんじゃないっていうことは、わからないわけではないよ。だけど、陛下としては、エレン様を皇配にって思ってるんだろう? そのうえ、エレン様もおまえとの結婚を希望している。つまり、二人の結婚はほぼ決定事項ってことだよな」


 腹立たしいほどのドヤ顔。言われなくてもわかってるのに――――ライナスは人が必死で目を背けたいと思っている現実を突きつけてくる。
 皇族っていうのは人の上に立つ宿命を背負って生まれてくるせいか、どうにも意地悪く育つ傾向がある。他人の思考や感情を先読みすることに長けているし、相手がなにを言ったら嫌がるのか熟知しているのだ。わたしは大きくため息をついた。


「言わないでよ〜〜。どうやったらこの状況を覆せるのか、今必死になって考えてるんだから!」

「現実はちゃんとと直視したほうがいいぞ? それに、俺が言わないで誰が言う?」

「それはそうだけど! そもそも、ライナスにとっても他人事じゃないでしょう? むしろ、バリバリの当事者じゃない? 一応皇配になりたいっていう気持ちはあるんでしょう?」


 その点、ライナスはわたしの夫に向いている。優秀だし。社交的で、女性に大人気だし。付かず離れず、わたしとビジネスライクなお付き合いをしてくれると思う。皇帝夫婦に必要なのは愛情じゃないし。