「珍しいね、ヴィヴィアン。いつもせわしなく動いている君がこんなにゆったりしているなんて」

「まぁね。今日はヨハナに予定をあけてもらったの。どうしてなのか、知ってるんでしょう?」

「もちろん。エレン様に会いに行ったんだろう?」

「そういうこと。結婚について話してきた」


 ライナスは頭の回転がとても早く、遠回りを嫌う。必要なことは自分でしっかりと下調べをするし、そのうえで上手に話を運んでいくタイプだ。

 わたしも回りくどいのは嫌いだから、ライナスとは昔から馬が合う。話が早いのはいいことだ。
 まあ、元々いとこだし。わたしたちの間には恋愛感情的なものは一切存在しないんだけど。


「それで? ヴィヴィアンはエレン様を結婚相手に決めてしまったわけ? 四年前からあの人のことが大好きだもんな、おまえ」

「――――からかわないでよ。わたしがエレン様のことをこの上なく思っているのは事実よ? だけど、そういうのじゃないって知ってるでしょう?」


 エレン様に出会ったきっかけ――――わたしが誘拐されたとき、ライナスも一緒にいた。っていうか、一緒に助けてもらったんだもん。
 この男はわたしの沼落ちの瞬間を知っている。隣で見ている。わたしがエレン様を神様みたいに崇める様子を、推し活の詳細をリアルタイムで見てきたのだ。知らないはずがない。っていうか、そんなこと言わせないんだから。