「あなたが面倒だと称したその役割、是非俺にやらせてください。もしもそれでヴィヴィアン様の心が少しでも楽になるなら、これ以上のことはありません。重荷は一緒に抱えます。足りない部分があれば今からでもすぐに身につけます」

「そ、そんなこと……」


 そんなこと、とてもじゃないけどさせられない。
 だって、エレン様の前に立ちふさがるものがあるなら、道端の小石ですら取り除きたいと思っているほどだもん。苦労かけるってわかってて「是非に」なんて言えやしない。


(っていうか! そもそもわたしは今日、自分はエレン様に見合うような女性じゃないって伝えに来たはず!)


 だけど、どうしよう? そんなこと、とてもじゃないけど言える雰囲気じゃない。

 チラリと顔を上げたら、エレン様は真剣な表情でわたしのことを見つめていた。
 心臓が跳ねる。身体がめちゃくちゃ熱くなる。
 いつも穏やかに澄み切ったエレン様の瞳の中に、チラチラと燃えるような光を感じて、いたたまれない気持ちになってしまう。


「ヴィヴィアン様、俺とのこと、本気で考えてみてください。俺はあなたと結婚したいんです」


 あまりにも真っ直ぐなエレン様の言葉。聞こえないふりも、訳がわからないふりもできっこない。

 コクリと小さくうなずいたら、エレン様は嬉しそうに目を細めた。