(うわぁあああぁ。うわぁあああぁああ!)


 なんかもう、どうしたらいいかわからない。
 鼻息荒いって思われたら嫌だから、息もまともにできないし。もちろん声だって出せないし。エレン様の心臓の音、わたしと同じかそれ以上に早いし。
 どうしよう。振り払うとか無理だし。抱き返すことも絶対に無理だし。


「――――わかってくれました? 俺が本気でヴィヴィアン様のことを可愛いと思っているってこと。俺にそう思わせるよう仕向けたのは、紛れもなくあなた自身なんです。ですから、俺が騙されているとしたら、その相手は他でもない、ヴィヴィアン様ってことになります」


 耳元でエレン様が囁く。少しかすれた低音。腕にギュッと力を込められて、もうダメ。この場で今すぐ蒸発してしまいそうだ。
 だって、エレン様が本当にわたしを意識してるってわかるから。


「あの!」

「うん?」

「千歩譲って、エレン様がわたしのことを可愛いって思っていることはわかったわ。だけど、それだけで結婚を望むなんて信じがたいのよ。だってわたし、皇女だし! 結婚すると面倒くさい女ナンバーワンだと思うの」


 わたしが主張すれば、エレン様は小さく首を傾げた。