「そんなことないわ。だって、現にエレン様がこの世に存在するんだもの。世界中を探したらきっと、エレン様に見合う賢くて美しい女神みたいな女性が存在するはずで」

「違う。おまえのおめがねにかなう女性が存在しない、というだけだよ。どんなに素晴らしい女性でも、おまえにはエレンに見合わないと感じるだろう。違うか?」

「そんなことない……はずよ」


 歯切れが悪くなったのは、単に実物を見ていないからだ。本当に素晴らしい女性がいたら、わたしはエレン様を祝福するもの。絶対にするもの。


「そもそも、私から言わせればエレンとてただの人間だ。ひとりの男だ。まあ、皇族に見合うだけの実力と人格を兼ね揃えているのは間違いないから、おまえの伴侶に相応しいと考えたのだが」

「なっ……! 待ってくださいお父様。相応しいだなんて言い方はエレン様に失礼です。とってもとっても失礼です! 今すぐ訂正してください」

「おまえなぁ……」


 お父様は呆れたようにため息をついた。