「……飲みたい、な。せっかく用意してもらったし、エレン様が普段どんなものを飲んでるか知りたいし」


 本当は胸がいっぱいで、喉をとおりそうな気がしない。だけど、こう答えないときっと、ずっとこのままな気がする。


「そうか。それじゃあ、このまま一緒にいただこうか」


 だけど、それでもエレン様は動かなかった。わたしの前にカップを差し出し、持ち上げるよう促してくる。


「あの、エレン様……」

「ほら、このままでも飲めるだろう?」


 おかしい。離れるどころか、さっきよりも距離が狭まっている。これじゃ絶対に肘が当たっちゃう。


「いや、だけど近すぎて」


 ダメだ。言った側からさらに距離を詰められてしまった。
 深呼吸を一つ。わたしは諦めることに決めた。


「――――本題に移りましょう。エレン様はどうして、わたしと結婚しようと思ったの?」


 かくなる上は時間との勝負だ。最短で話が済むよう、わたしは質問を投げかける。