「終わりましたよ」

「あ……う、うん。ありがとう」


 どうしよう。余韻が全く冷めやまない。
 魔法をかけられたのはユリの花じゃない。わたし自身なんじゃないか――――そんなふうに思えるほど、身体が熱いしドキドキする。


「改めて、受け取っていただけますか? 俺が好きな花です。ヴィヴィアン様も間違いなく好きだろうと思って選びました。あなたに喜んでいただきたい――受け取っていただきたいんです」

「……っ! エレン様……」


 戸惑うわたしに、エレン様はひざまずきユリの花束を差し出してきた。


(ああ、どうしよう! 涙が……涙がとまらない)


 ダメなのに! 現実と夢がごっちゃになっている。だって、エレン様にこんなことをしてもらって許されるのは、彼が本当に愛している女性だけだもの。

 それなのに、わたしは馬鹿だ。
 嬉しい。どうしようもなく嬉しいんだもん。

 そんなわたしを見つめながら、エレン様はそっと目を細めた。