奏音は次の講義の支度をしながら


溜息を溢しながら私を見た。


「同窓会の幹部を任されちゃった」


同窓会のことなんてすっかり忘れていたのに


講義で一緒になった奏音の一言で思い出してしまった。


同窓会、か。


あれから同窓会のグループを退会はしていないから


たまに連絡は来ていた。


けれど、それは私宛のものじゃない。


そのため、目を通すことなく


まとまって最新のトークまでスクロールしていた。


幹部の話は、既に決まっていた。


思い出したくない、あのいじめっ子たちで。


「大丈夫?」


私の顔色を伺う奏音に「大丈夫」と笑って返す。


ごめんね、心配かけちゃって。


「幹部って大変なの?」


「どうなんだろうね。


なすりつけられたようなもんだからよく分かってなくて」


「そっか」


なすりつけられた、か。


あの後、私は美化委員を任されるようになった。








きっかけは事情を知らない先生の押し付けだった。


それを機に、いじめはエスカレートした。


不思議なことに私がいじめられることで


クラスの雰囲気は良くなっていった。


ターゲット選びに悩んでいた首謀者が


私だけを虐める方針に切り替えたからだと思う。


委員会を共にした平川くんとは何もない。


次第に彼も離れていった。


いや、私が身を引いた。


そんなことで私に残ったのは小春だけだった。


きっと小春もこんな私とは関わりたくなかった。


別々の高校に進学してからは


私の心の中からも小春が消えていく日々があった。