やはりそれは私に対して言ってくれた言葉らしい。

 …私を、見ようと…?
 そうだ、アツシさんは私のどこが良かったのだろう?私自身のことを見ようと、アツシさんはしてくれていただろうか?
 そういえばいつも笑ってごまかしていた気がする。
 付き合っていても、恋人らしいことはデートだけ。キスなんて一度も…

 私は自分を見つめているその彼を見返す。

「っ…私、分かってました…分かっている、つもりだった…でも、あんなにハッキリと言われたら…。私、本当に…」

 今は悲しさしか出てこない。
 私はアツシさんが好きだった。でもアツシさんは…

 彼は私をじっと見てくれている。
 無表情のようだけれど、私を心配してくれているんだろう。

「ありがとうございます、私を心配してもらって…。分かってたのに、自業自得なんです…。でも…」

 泣いてばかりもいられない。私は何とか顔を上げた。
 もう両親も私にはいない。そうしたら私は一人で生きていかなければならないのだから。

「…前、見ます…。諦めるとか、諦めないとかじゃなくて…。私、一生懸命に前を見て生きていかないと…。そうしたら…いつか私でも、誰かの役に立てますよね…?」

 ポロッと出た自分の気持ち。

 黙って聞いてくれていた彼の目が少し驚いたように丸くなる。

 …考えてみれば恥ずかしい。
 初対面の相手に好きな人との別れを見られて、こんなに一生懸命に愚痴を聞いてもらうなんて…

「すみません…!ほ、本当に、ありがとうございますっ」

 私は恥ずかしさのあまり、すぐにそう言って頭を下げると彼の前から立ち去った。


 そう、することはいっぱいある。

 両親の遺産も少しだけあるし、家の借金もありがたいことにそんなにはない。
 それでも学校にはまだ行かなくてはいけないのだから、まずはまたアルバイトを始めないと…