その日、講義が終わり学校から出てくると私はため息をつく。

 帰りたくない。

 きっとまた家のすぐ近くには叔父さんがいて、私に一緒に住むよう説得される。
 ボディーガード代わりの部下の人もいて、怖くて強く断れない。
 テイキさんには言えずじまいでとうとう約一週間…

 足が重く、思わず足が止まってしまう。

 しかし、ふとあげた顔の先に私を見る一人の影。

「…テイキさん…!」

 間違いなくテイキさんだ。
 私は気まずさよりもやはり会えた嬉しさが勝ったまま名前を呼ぶ。

「ナツ…!!」

 テイキさんは私に駆け寄ると、私の手を強く引いて歩き出す。

 やっぱり、私を探してここまで来てくれたんだ…

 テイキさんは絶対に怒っている。
 しかしまだ全てを説明する踏ん切りがつかない。

「わ、私、帰らないと…」

 私がそう言ってみるけれど、やはりテイキさんは足を止めない。

「黙ってろ!!」

 そう私に向かって怖い顔で怒鳴ると、駅のタクシーに私と乗り込み、私とテイキさんの家の方に向かった。

 私はずっとテイキさんへの申し訳なさと怒りへの怯えで震えが止まらなかった。

 何と言って切り出そう…
 まずは謝って、それから今までのことを話さなきゃ…

 私が突然のことで何も言えずに考え込んでタクシーに乗るうちに、テイキさんの家についてしまった。