ところが私の問い掛けには答えず、テイキさんはかなり苛ついた様子で送ってくれた男の子をチラリと見る。

「…誰だ…?そいつ…」

 明らかに怒りを含んだその声。

 …テイキさん、怒ってる…?
 どうして…?

 私は混乱のまま口を開く。

「あの…学校で同じ課題グループの…
「何?この人、青沢さんの彼氏?うわ、怖っ!」

 やっと出てきた私の言葉を遮るように、男の子は軽い調子でそう言った。

「な…んだと…?」

 テイキさんはいつもの無表情から完全に怒りが感じられるほどに。
 これは私のコンビニの失敗のときと同じくらいの怒りの声だ。

 私は軽口を叩く男の子に向かって叫ぶ。

「やめて!!ハイジマさんには関係ありません!テイキさんに、酷いこと言わないで!!」

 そして急いでテイキさんに謝った。

「…グループ課題が遅くなってしまって、彼は私を途中まで送ってくれたんです…。テイキさんに心配掛けてしまってごめんなさい…!」

 しかし、怒りが収まらないらしいテイキさんに、男の子は追い打ちを掛けるようにシレッと言い足した。

「そんなに取られるって心配するなら、あんたがいつも送っていれば良かったんじゃないの?…青沢さん、悪いこと言わないからそんな奴やめておきなよ。じゃ」

 男の子は何も気にしないような軽い足取りで行ってしまった。