「えー?いいですよ、そんなの」 「うるさい。周りを見ろ」 確かに、人が遠巻きに見てる。あ、まるで本部長が私を殴ったみたいになってる? ふたりでそそくさとその場を去り、本部長の家までタクシーに乗せてもらった。 あっという間についた。めちゃくちゃ近い。びっくりした。 そして、マンションおっきい。 本部長はエレベーターに入ると十階を押した。 「水川。実家から通っているのか?」 「はい。一時間半くらいかかりますけど、頑張ってるんです」 「ふーん。それなら、急がないとな。終電なくなるんだろ?」