引っ越してからほぼ同棲だったというのもお父さんは気付いていて、娘が綺麗になっていくのを複雑なおもいで見ていたとお母さんが笑いながら代弁していた。

 台所へ下がったお母さんに私は言った。

 「お母さん」

 「ん?」

 「私が台所で並んで食事作りたいねって言ったの覚えてる?」

 「ああ、言ってたわね。小学生ぐらいのときだったっけ?」

 「うん。それを実現してくれるってプロポーズで言われたの」

 お母さんは手を止めて、こちらを見ると、嬉しそうに答えた。

 「よかったわね、香那。夢が叶うといいわね」