私は彼の顔を見て、あふれる想いで胸がいっぱいになった。両手で顔を覆ってしまった。
「香那」
彼が呼んだ。両手を取って目の前を見ると、彼がいた。そして、片膝をついた。
手の上には濃紺のビロードの箱。蓋を開けて私に向けた。
「水川香那さん。俺と結婚して下さい」
私の目を見てはっきりと言った。
私は震える声で答えた。
「はい。あなたのお嫁さんにして下さい。そして、この夢を叶えてくれる?」
彼は私の左手の薬指に大きなダイヤのついたリングを入れると、そっと抱き寄せた。
「ああ。やんちゃな男の子と可愛い女の子を作ろうな。そして、いつか三人で俺のためにオムライスを作ってくれよ」
彼の腕の中でうなずいた。
ぎゅっと抱きしめた彼は、私の頬の涙を唇で拭いながら、最後には深いキスをした。
リビングのテーブルには大きな花束の横にあのイベントで配られたパンフレットが置いてある。
そこには、同じ台詞が載っている。
私の夢と彼の夢がひとつになった瞬間だった。



