「そんなことないよ」
「だって、席譲るとか緊張してたら出来ないぞ、普通はさ」
橋本君は椅子を指さして言う。私は上を見ながら考える。
「うーん。そうだねえ。なんとなく、かがんで後ろからのぞき込まれるのってあんまり好きじゃないんだよね」
「は?」
「なんかさ、支配されてるみたいで。だから、座ってもらって自分で立つほうが好きなの」
橋本君はわたしのことをじっと見て呟いた。
「お前ってさ。少しやっぱり天然とはいわないが、感性の鋭いところがあるよな」
「そう?ね、ちなみにそれって褒めてる?」
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