格好いいな。先輩みたいにいつになったら私はなれるのかな。なんとなくだけど、何年いてもなれないような気がする。
 だって、覚えが悪いのよね。一生懸命何度読んでも覚えられないの。あと、型番って数字の羅列。似ていてよくわかんない。

 ため息をついていたら、先輩が電話を置いて、こちらを見た。

 「香那ちゃん。大丈夫だよ。電話はもう大丈夫だし、後は書類やれば乗り切れる。そんな顔しないの」

 「……あーん。先輩。お願いです。あと半年、ここにいてください」
 
 私は水川香那。もうすぐ入社二年目。この素材に関する質問が難しくてまだ慣れない。入社したのはHARUNAという調理器具主体の会社だが、配属が子会社だった。がっかりしていたら、元々同じ会社の部署が三年前に独立しただけだそうで、同じビル内だった。

 お給料も変わらない。それに、先輩がすごくいい人だった。それがこの吉崎紗良先輩。本社のほうにもファンがいっぱいいる。営業事務だったらしいけど、すごく仕事が出来るらしくて、入社してからもよく噂を聞いた。