「……知らないよ。確かに、僕はクロウディア家で生まれてる……けど……だけど!僕には、一切クロウディア家で育てられてた頃の記憶はないんだ」

「……クロウディア家の家系の者は、全員知っていると呪具は言っているが……そうか、お前が……」

そう言って、男性は笑い出した。ルーチェは、言ってる意味が分からない、と言いたげな顔をする。

「クロウディア家に生まれ、捨てられた哀れな子よ。また会おう」

そう言ってから、男性は姿を消した。

「……ルーチェさん、どういうことですか?」

ロネは、恐る恐るといった様子でルーチェに問いかける。ルーチェは少し考えたあと、「……僕は」と口を開いた。

「僕は、クロウディア家で生まれた……けど、幼い頃に捨てられて……それから、クラル様に拾われたんだ。捨てられた理由は、今でも分からない。父様……えっと、僕の育て親の方ね。父様も、理由を知ってるらしいんだけど、教えてくれなくてね。クロウディア家での記憶は、全くないから推測も出来ない」

簡単に、ルーチェは過去を話す。そんなルーチェを、ロネは悲しそうな顔で見つめた。

「僕は、生みの親に捨てられた。けどね……幸せだよ。クラル様に拾われて、クラル様の両親に育てられて、皆温かくて……だからね、僕は……今の家族のことが大好きなんだ!」