「すみれ。一緒に買い物に行こうか。」

航はたまに車を出してすみれを駅前のショッピングセンターへ連れて行った。

ショッピングセンターは家族連れの客達で賑わっていた。

けれど隣に航がいるすみれはなにも羨ましくなかった。

「なにか欲しいものはないか?何でもいいぞ?」

すみれは首を振った。

自分のことであまり航にお金を使わせたくなかった。

「すみれはなんにもねだらないからなあ。欲しいおもちゃはないか?」

「・・・・・・。」

「わかった。じゃあ服を買おう。」

航はすみれを子供服売り場へ連れていった。

「好きなの選んでいいぞ。」

「でも・・・。」

「遠慮するな。」

すみれはためらいがちにボーダーシャツやジーパンを選んだ。

可愛い服を選ぶのが恥ずかしかった。

「お。これなんかいいんじゃないか?」

航はシンプルなブルーのワンピースを手に取った。

襟とポケットについている白いレースが清楚で可愛かった。

・・・航君はこういう服を着る女の子が好きなのかな?

「うん。これ欲しい。」

すみれはそのワンピースを航から受け取った。

「そうか。すみれによく似合うと思うぞ。」

それはすみれのお気に入りの服になり、航と出かけるときは必ずそれを着るようになった。