迫田は平日は朝８時に出勤し、定時に職場から自宅へ帰って来た。

それは判で押したように規則正しい毎日だった。

すみれはそれに従い、朝７時に迫田の家を訪れて朝食を作り、日中は洗濯や家の掃除や庭の手入れをして過ごし、夕食の用意を済ませてから迫田が帰宅する前に家を出るようにした。

夕食時に汚れた食器はそのままにしておいてもらい、翌日すみれが片付けることにした。

迫田には自室には入らないで欲しいが、それ以外の部屋は好きなように掃除や片付けをしてくれて構わないと言われていた。

迫田は自室とリビングしか使わないらしく、他の部屋はいつも暗くガランとしていた。

すみれは人気のないその埃っぽい部屋達を整え、掃除をし、窓を開けてこまめに換気をした。

休みの日は平日と同じように朝食だけ作り、あとは昼食と夕食を作り置きしてすぐに帰宅するようした。

赤の他人である自分がずっと家の中にいたら、きっと迫田も落ち着かないだろうと考えたすみれなりの配慮だった。

迫田は物静かな男で、その表情には影があった。

そして職場へ行く以外はめったに外出しないようだった。