今にも泣き出しそうな表情をするクラル様を、僕は抱き締めた。

「クラル様、大丈夫ですよ。僕は、何があってもクラル様から離れたりはしません。僕が側近になるって決めたのも、クラル様の役に立ちたいからで、嫌々やっているわけではありません」

「……ルーチェは、嫌じゃないの?魔王と一緒にいること」

クラル様の問いかけに、僕は「嫌じゃないです!」と即答する。

「クラル様は、確かに魔王です。だけど、それ以前に僕の兄で……僕の家族で、僕の命の恩人だから。あの時、クラル様に見つけて貰えなければ、僕はあのまま死んでたかもしれない。だから、感謝してもしきれないんです。僕を救ってくれたのは、紛れもないクラル様で……クラル様が魔王だったとしても、僕にとってはかけがえのない存在、だから」

そうだ。クラル様は、僕の家族は……僕にとって、かけがえのない存在なんだ。

「聞かせてください。クラル様が思ってるすべてを。クラル様の気持ちを。僕は、クラル様をもっと知りたい。迷惑だなんて、思わないから」

クラル様から離れて、僕はクラル様を見つめる。クラル様は、涙を零しながら「ありがとう」と頬を赤くして嬉しそうに微笑んだ。