数分待っていると、エコバッグを手にした小森が出て来た。
「あれ?藤宮君は?」
「……帰った」
「あ、そうなんだ」
「頼まれた物、買えたか?」
「うん」
エコバッグから取り出したのは缶詰めのキャットフード。
「猫飼ってるのか?」
「ううん、飼ってない」
「え?」
「お隣さんちの猫を預かってるの。身内の方が入院したとかで、今マレーシアに行ってるから」
「そういうことか」
「本当は今日あたりに帰って来る予定だったんだけど、まだ帰れないらしくて。預かってたキャットフード切らしちゃって」
「そっか」
コートの襟を掴んでにこっと笑う小森が可愛く見える。
いや、いつ見ても可愛いんだけど。
「外暗いし、家まで送ってく」
「えっ、いいよ~っ!うちすぐそこだし」
「それでも、送ってく。変な男に絡まれたりするかもしれないし」
「いや、さすがにそれは無いと思うよ。ホントにすぐそこだから」
「……だとしても」
「………じゃあ」
俺の視線に耐え切れなかったのか、小森が折れてくれた。
ってか、こんなチャンス逃すわけねぇだろ。
コンビニを後にし、一方通行の道を右に曲がって少し進んだ、次の瞬間。
「送ってくれて、ありがと」
「え?」
「うち、ここなの」
「………近っ」
「だから言ったじゃない、すぐそこだって」
コンビニから歩いて50mくらい。
数軒分しかない距離。
駅から300mあるかないか。
いやいやいやいや、近すぎんだろっ。
ってか、もうデート終わりじゃん。



