「持ち家なのか、借家とか分譲マンションとか、それだけでも分かれば探しやすいけど。最近じゃ、表札無い家も多いし、マンションとかならセキュリティー上、中にも入れないしな」
「……ん」
「けど、美味しそうな店がいっぱいなのは分かったな」
「だな」

夕方というのもあってか、あちこちから美味しそうな匂いが漂って来る。

「食べて帰るか?」
「あ、う~ん、……20時に姉貴が彼氏連れて来るとかで、顔合わすことになってて」
「は?それを早く言えよっ」
「あっ、いやそうじゃなくて。なんか、準備するからそれまでどっか行ってろって言われたから」
「あぁ~、沙知(さち)さん、言いそう」

見た目はお淑やかなのに、朝陽には言いたい放題の姉、沙知(24歳)。
取引先の人と付き合い始めたとは聞いてたけど、親に紹介するほど進展したんだ。

「喉乾いた。そこのコンビニ寄っていい?」
「おぅ」

駅に程近いコンビニエンスストアに入る。
付き合ってくれた御礼に飲み物を購入して店を出た、その時。

「上條君っ、藤宮君」
「ッ?!」
「あ、まどかちゃん、……こんばんは」
「こんばんは~。どうしたんですか?こんな時間にこんな所で」
「あ、……ちょっと近くで用があって」
「……小森は?」
「私はお使いです」
「……へぇ~」
「それじゃあ、また」

ぺこっと会釈した小森は、俺の横を通り過ぎて店内へと。

「もう陽も暮れてるし、送ってやりな。ここから近いんだろうけど」
「……ん」
「じゃあな」
「おぅ」

朝陽はホット珈琲を飲みながら駅へと向かって行った。