10月下旬。
体育祭が終わり、余韻に浸る余裕もなく中間試験目前に。

「いい加減、機嫌直せよ」
「……話しかけないで」

体育祭以来、廉に対する態度を180度変えたまどか。
朝陽に『デリカシーに欠ける』と注意され、長瀬から『重い』と一喝され、猛省中。

本人目の前にすると、どうしても近づきたいし触りたい衝動に駆られる廉。
満員電車に乗り込むことで、ストレス発散しているようなものだ。
それじゃなくても、完全にバリアが張られて近寄りがたいのに。

「何で話しかけたらダメなの?」
「……」
「なぁ、小森」
「……電車降りたら話すよ」
「………分かった」
「上條、ウザいよ」
「長瀬には話しかけてねぇ。会話に入ってくんな。せいぜい踏みつぶされねぇように気を付けるんだな」
「黙れ、ウザメン」

高校の最寄り駅に到着すると、当然のように同じ制服の生徒が沢山いる。
以前にも増して好奇な視線が向けられてるのは確かで。
どんな奴でも小森に近づこうもんなら、瞬殺で捻り潰したいと本気で考えている廉。
どんなことでも難なく簡単に解決して来た廉にとって、まどかは初めてぶち当たった超難問だった。

駅で合流した朝陽も交え、高校へと向かう最中。
長瀬と朝陽が数歩先を歩く形で、廉とまどかが遅れて歩いている。

「あのね、私そんなに器用じゃないというか。正直、全力で頑張ってもいつも2番で」
「……ん」
「上條君の気持ちは嬉しいけど、今は勉強に専念したいというか、すべきというか…」
「……ん」
「1科目でもいいから、……1番取りたくて」
「……ん」
「私がこんな話して、手を抜かれても困「手、抜くわけねぇだろ」
「ぅっ……ん」
「ってか、それだけ?」
「へ?」
「勉強、俺が教えてやろうか?」
「っ……、だから、そういういことじゃなくて」
「上條、まどかの気持ち、考えてやってよ」