毎日登校の際にコンビニで買ったり、購買で買って済ませてたけど。
『お弁当』という発想がそもそも無かった。
「本当は作って来ようかと思ってたけど、この冷蔵庫事情は深刻すぎるっ」
「ッ?!!」
何その素敵すぎるワード。
『作って来ようかと』って、自宅から手作りってこと??
今夜の夕食を作って貰えるだけで、十分すぎるのに。
盆と正月が一緒に来た、的な……。
「あっ!!」
「え、何?どした??」
「いい案、思いついた」
「……ん?」
両手で口元を覆って、凄く楽しげにするまどか。
「この食材、持ち帰ってもいい?」
「……え?」
「そしたら、毎日完璧なお弁当作ってあげれる♪」
「っっっ~~っ」
何、そのハワイ旅行当選!みたいな提案。
やべっ、顔が緩む。
「ねぇ、聞いてる?……持ち帰ってもいい?」
今、話しかけんな。
表情筋がマジで弛緩してんだって。
「好きにしろ」
もう無理。
これ以上近くにいたら、触れたくて気が狂いそう。
「ッ?!!」
照れてる顔を隠すために顔を背けたら。
「怒ってるの?」
「っ……」
服をツンツンと引っ張られた。
「怒ってないから」
「じゃあ、こっち向いて…」
いや、だから。
今は無理なんだって。
これ、天然なの?
「ッ!!!!」
背中にぴとっとくっつかれた。
「嫌いになんないでね……」
「っ……」
お手上げだ。
こんなことされたら、必死で我慢してんのが馬鹿馬鹿しい。
体をくるっと反転させて、俯く彼女を抱き締めた。
「なるわけねーだろっ。あんま可愛いこと言ってっと、襲うぞ」
「………廉になら……何されてもいいよ……」
脳細胞、死んだっぽい。



