「俺、生まれて初めて女の子から貰った」
「へ?」
「クラスの女子のも、他のクラスの女子のも。もちろん1年や3年のも、全部断ったから」
「っ……」

『上條なら全部断るでしょ』和香が言ってたことは本当だったようだ。

「開けてもいい?」
「え、今ここで?」
「うん、今ここで」
「っ……」

おねだりするみたいに上目遣いされてしまっては、ダメだとは言いづらい。
恥ずかしさを隠すために視線を逸らし、再び隣りに腰を下ろした。

カサカサとラッピングを開ける音が耳に届く。
手渡す時より緊張する。
思わず、ごくりと生唾を飲み込んだ、次の瞬間。

視界の隅にスッと彼の腕が動くのが見えた。
無意識にそれを視線を追うと、手の甲で口元を隠す照れた表情の彼がいた。

照れが感染する。
私まで顔が火照って来た。

「小森」
「……はい」
「これ、……声で聞かして」
「っ……」

箱から取り出した小さなカード。
手渡しできるか分からないし、口で伝えれるか自信が無かったから。

『好きです』ってカードに想いを託した。

ベンチから腰を上げた彼は、私の目の前にしゃがみ込んだ。

「小森から聞きたい」
「っ……」

真っすぐ見つめられて、耳まで真っ赤になる。
ボンッと顔から火を噴いてるんじゃないかと思うくらいに。
それを隠すために両手で顔を覆う。
心臓が口から出て来そうで、ドッドッドッドッと物凄い速さで鼓動が暴れて、どうしていいのか分からない。

「小森」

名前を呼ばれてるだけなのに、声が甘くて。
耳の奥がぞわぞわする。

「……きっ、………すきっ、んっ?!」

彼に抱き締められた。

「今の言葉、取り消し出来ないからな?」

ぎゅっと抱き締める腕が強まり、それに応えるように彼のコートをぎゅっと掴んで、小さく頷いた。