「玖生様は乗ってません。今日は外出先へ直行なので。私は玖生様からお花を乗せて会社へ行くよう頼まれたんです」
「え?それならそれで連絡してくれればいいのに……」
「昨日、言おうとしたらもう寝るからと電話を切られたと言ってました」
そんなことまで運転手さんに言ったの?信じられない。
私が赤くなって下を向いたら、運転手さんが笑っている。
「ははは。本当に、玖生様は面白いでしょ。子供みたいなところもおありなんですよ。甘えベタでね」
「すみません、振り回すようなことしてしまって……」
「いいえ。詳しく伺ったら、今日からエントランスのお花を活けるお仕事もされるとか?花やそのほか色々あるだろうから車が必要だと玖生様がおっしゃってました」
「相変わらず、気が回るんだか、気が利かないんだかよくわかんない人ですね」
ため息をつきながら言う。



