「恋人だったのか……」 「付き合ってくれと言われて、舞い上がっていたのは私だと思うの。恋愛経験もなかったし、夢を見ていた。いつか私となんて……」 彼に目を向ける。 「でも結局、結婚相手としては不都合だったみたい。約束した日に婚約者という人が現れて終わったわ。今はその婚約者と一緒にいるはずよ」 「婚約者は誰だ?」 「確か、大手銀行の頭取の娘さん。私とは立場が違いすぎ。張り合う相手でもなかった。夢を見ていた私が馬鹿なのよ」