「……それなら、想像ついてるでしょ」
「君があいつの言葉に踊らされるタイプでないことも知っているから聞いてるんだ」
「褒めてくれてるの?」
「茶化すな」
私は茶碗を両手で下から持ってゆっくり回しながら話し出した。
「フロントとして働きながら、花をエントランスに活ける仕事もしていたの。神田ホテルグループ主催の大きなイベントにも関わった。彼に話しかけられて徐々に親しくなった」
「……」
「明るくて社交的。ホテルの御曹司って感じだった。対して私は少し内向的。ホテルのフロントなんて向いていなかったと思う。感謝はしてる。彼が紹介してくれて今も仕事に繋がっているお客様もいるくらい」



