お店についた。 玖生さんが急だったので入れるか聞いてくると言って、先に暖簾の中へ入っていった。 「あの……」 運転手さんがおずおずと話しかけてきた。 「はい?」 「玖生様が笑っておられるのを久しぶりに拝見したんです。しかも若い女性と。どうか、玖生様のことよろしくお願いします」 初老の男性に頭を下げられて、驚いた。 「あ、そんな。こちらこそ、お世話になりました。ありがとうございました」 「玖生様が素を見せられる方はほとんどおられない。お嬢さんのことは特別なんでしょう」