「行きつけの懐石料理の店に行こうと思う。まあ、間違いのない店だ。いいか?」 「はい。でも……その店、私払える金額です?」 玖生さんはお腹を押さえて笑っている。 「まあな、契約社員に払わせるには少し高いかもしれん。今日は就職祝いをしてやるよ」 就職祝い?意味分からない。 「ありがとうございます。いつかお返しできるよう、稼がせてくださいね」 「ああ。しっかり働いてくれ」 「もうっ!」「ははは」 ふたりで車の中で声を立てて笑った。 運転手さんが、ミラー越しに驚いている。