玖生は由花の手を自分の腕に絡ませて、会場へ向かって歩き出した。
「断ったよ、もちろん。だが納得させるには君といるところを見せて、君がいかに素晴らしいかを思い知らせる必要があるな」
「え?」
「今日の美しい姿を他の奴らに見せるのは気が引けるが、いい薬になるだろう。そして、俺がどれだけ君を愛しているか見てもらえればわかるはずだ」
真っ赤になった由花は黙っている。
「前の威勢のいい由花はどこへ行ったんだ?俺はそういう由花だから、結婚したいと思ったんだ」
「……もう。今日は段取りを頭に入れるだけで精一杯。話すと忘れてしまう。英語も不安なのに」
「隣に俺がいるだろ?仕事の俺を見たことがないよな?今日は由花に惚れ直してもらえるよう頑張るとするかな」
「ええ。本当に冗談抜きで頼りにしてます。よろしくね、玖生さん」



