「由花に何を言った?」
「もちろん、私の方があなたの仕事に理解があるし、長い付き合いでおじいさまにも気に入られてる。諦める気ないからと言ってきたのよ」
そうか、それでこの間のおじいさまとの顔合わせの時もあんなに緊張していたのか。おじいさまに自分を選んでもらえない可能性もあると思っていたに違いない。以前もそうやって神田と縁が切れた。
何故俺に亜紀と会ったことを黙っていたんだ。どうせ、心配かけたくないとかそういうことだろうが……。
返事をしないでいる玖生を亜紀はじっと見ている。
「玖生さん?まだ正式な婚約はしていないんでしょ。考え直して私にしたほうがいいわ」
時計を見た玖生は小さく答えた。
「由花以外俺の相手はいない。悪いが時間がない。パーティーでまた挨拶させてもらおう」



