「聞いたわ。だけど、彼女はあなたとのことよりも自分の事を優先して、あなたを待たせているじゃない。信じられないわ」
「それは、そのほうがいいと僕も思ったからだよ。彼女のおばあさまは病気になって無理をしないほうがいいと言われている。だからすぐに家元を継いでおばあさまの負担を減らそうとしているんだ」
「どうして彼女を選んだの?玖生さんは女性を知らないから、ああいう強い性格の人に引きずられてしまったんでしょ。私なら何があったとしてもあなたを優先するわ。それがあなたへの愛情よ。彼女にはそれがないのよ。自分が一番大切なの。前の神田グループ御曹司にもそれで捨てられたんじゃないの?」
「亜紀、それは違う」
亜紀は玖生の隣に座ると腕をつかんだ。
「ねえ、私のこと突き放すこともしなかったわよね。私の気持ちを知っていて、いずれ総帥になるとき結婚してくれるつもりだったんでしょ?だってずっと彼女を作っていなかった。私わかっていたのよ」
玖生は彼女の手をつかんで、離した。



