玖生は、総帥の部屋で話していた杉原親子に挨拶をした。
「玖生さん。縁談のこと、何も話していないのに断られるのは納得できないの」
「わかった。ふたりで話そう。杉原社長いいですか?」
「ああ。亜紀は君からきちんと言われない限り認めたくないと言っている。気持ちもわかるので、よく話し合って欲しい」
おじいさまは困った顔をして、手を振って出て行けと合図した。
玖生は亜紀と部屋を出ると、自分の部屋へ彼女を案内した。
「亜紀。君の気持ちはわかっているが、今までも言っていたとおり、君は妹のようなものだ。恋愛感情はないんだ」
「それは、これから一緒にいれば変わってくるわ。男女の付き合いをすればおのずと恋人になれる。玖生さんはあまりそういう経験がないから知らないだけよ」
「亜紀。僕は最近婚約した女性がいるんだ」



