「はい。勝手ばかり言って申し訳ございませんでした。そちらのご意向に従います。よろしくお願いします」

 玖生さんはアポイントが入っていて、すぐに通信が切れた。

 「あなた。来週のアメリカでのパーティー、彼女を連れて行きましょう」

 「何だと?まだ、正式に婚約しておらんぞ」

 「私達が了承したんだから同じようなものでしょ。由花さんのおばあさまからも了承を得ています」

 「それはいい考えですね、母さん。杉原さん達には申し訳ないが、玖生がどれほど彼女を大切にしているか、目の当たりにするので諦めもつくでしょうし……」

 「まあ、それよりも取引先に婚約済みであることを言っておかねば、未婚のままだと縁談がきっと次から次と来るのは目に見えておる。それこそ地位目当てのな。だからこそ、先に結婚させたかったのだ」

 「それでね、今日は玖生に驚かされたから、彼女のアメリカ行きは黙っていましょう。そして驚かせてやりましょう。ふふふ」

 ほくそ笑む大奥様を総帥とお父様は呆れて見ている。

 渡米の日程を軽く打ち合わせし、お三方を残して私は先に失礼した。早くおばあちゃんに嫁として認められたことを報告して安心させてあげたかった。今頃さぞ心配しているだろう。そして……仏壇の両親にも報告したかった。由花は大好きで尊敬する人と結婚しますと……。