「実はこの間電話で正式に婚約しようと言われました。時間がなかったようで詳しくは話していません」
おばあちゃんは笑顔でうなずいている。大奥様は私の手を取って、言った。
「そうね。正式に婚約してから、総帥になるのがいいでしょう。そうじゃないと、玖生さんがいくらあなたをいいと言ったところで現総帥であるあの人がしびれを切らして亜紀さんと結婚させることになったりしたら目も当てられません。縁談相手の亜紀さんはとても優秀ですし、仕事以外でもうちとのお付き合いもありますからね。お父上との関係を考えるとお断りするのも難しいところなのよ」
やはりそうだったのね。当たり前だ。これだけ大きな財閥の婚姻。見合いが普通なのだから。
「私は何も持っていない上、織原流家元を降りる気もありません。清家ご家族に選んで頂けないのは覚悟していました。ただ、彼を好きになり、彼が私を選んでくれる限り、できるだけのことを致します。清家のために尽くす覚悟はあります」
頭を下げた。おばあちゃんも横で一緒に頭を下げてくれる。
「清家さん。優先順位を清家財閥の仕事として、家元の仕事の日程を変えるなどできることは致します。ご迷惑おかけ致しますが、由花のこと総帥にお口添え頂けませんでしょうか」



