「そう。前の御曹司とは違うんじゃないかしらね。何しろ女性と浮名を流していたわけでもなく、由花に一途そうだもの」
大奥様はおそらく祖母に玖生の縁談のはなしはしていないのだろう。祖母はそのことに触れてこない。
彼を信じるとは言ったが、心配ではあった。
結局、襲名披露はもう少ししてからにしようと各地の弟子とインターネット会議をして話し合った。
それに襲名披露に伴うパーティーをホテル開催にして、各地から来るお弟子さん達をホテルに泊めるというのがいいだろうという話も出た。
以前は神田ホテルグループに勤めていた由花はそういった行事をすべて神田ホテル内で執り行ってきた。各地のホテルの花も扱ってきたから、今後どうするのか、仕事を失った彼らに追求された。
由花はそのことについても、中田さんにツインスターホテルで頼めないか交渉してみようと思っていた矢先、夜に玖生から電話が来た。
「こんな時間に大丈夫?そちらは早朝じゃないの?」



