「……謝る相手が違う」
「……織原さん、ごめんなさいね」
「いいえ」
俺たちは意気消沈したおばさんを置き去りにして、最上階のレストランフロアへ移動した。
「由花。何だ、その目は……」
「……だって。また、噂の種を蒔いたようなものだもの。結局相手が違うだけで、同じ事言われそう。あなたに迷惑かけたくなかったのに」
「お前と俺とは一蓮托生。何が迷惑だ。今後お前をどうこう言う奴は俺に喧嘩をふっかけているということを教えてやったんだよ。目にもの見せてやる」
「お願い、やめて。私のことで何かあなたに迷惑かけたら大奥様にも顔向けできない。きっとまた清家の方々に嫌われて私……」
下を向いている由花を見て、隣で手を握った。



