家元は固まっている。
「あなたの噂のせいで、俺は親友から絶縁されそうになりました。彼は親友であり、大事な取引のある清家の御曹司ですよ。訂正して頂かないと、このホテルグループの危機です」
「……どういう意味でしょう?」
家元は胸を張り、言い返した。
「五十嵐さん。織原由花は、私と結婚前提で付き合っているんですよ。鷹也は私のために彼女を周年パーティーに抜擢した。それをなんだか確認もせず勘違いして鷹也とそういう関係だと吹聴なさっているとか……」
家元は青くなった。そして、由花を見て指さした。
「……あ、あなた、何なの?仕返しにしてはやり過ぎじゃない?今度は清家財閥?怖すぎるわ」
「五十嵐さん、由花は私が必死で口説いてようやく付き合ってもらえるようになりました。オーナーとは何もありませんよ。それと、由花が誘惑して仕事を取ったとかろくでもない嘘をさも本当のように言いふらしておられるようだが、根拠のないことをあまり知らない相手を見ないで言わないことですね。自分ひとりで責任を取れますか?」



