「だからやるんだ」
インカムで何階に家元がいるか、鷹也が確認した。
目配せした鷹也の後をついていく。
由花は俺の腕を引っ張り、行かせまいとする。
手を叩き、顔を覗きこみ、笑顔を見せてやる。
それでも泣きそうな彼女を見て、わざと頬に軽くキスしてやった。びっくりしたのだろう、真っ赤になった。彼女の腕の力がそのとたんに抜けた。
それをいいことに、引きずるように連れて行く。
「任せておけ」
そう小さく言いおいた。エレベーターに三人で乗り、クラブフロアのある二十五階に着いた。エレベーターの開いた先にクラブフロアという看板と、洒落た家具、その上に花が花器に活けてある。
そう、今まさに活けている最中だ。横には花を持ったまま、花器を見つめる中年の女性がいた。



