やはり、知っていたのか。俺が鷹也をひと睨みすると、鷹也は慌てて由花の頭を上げさせた。
「いや、こちらこそ悪かった。君に頼んだ理由を個人的な理由と言ってしまったせいだ」
「私もそういったことに思い至らず、未熟だからです。以前いた神田ホテルのこともこんなに噂になっていたなんて知らずに……」
由花は唇を噛んだ。
「由花。どうしてお前に鷹也が依頼したのか、その本当の理由を噂を流した元凶に教えてやろう」
「え?」
鷹也は今日が二週間に一度の花を代える日で、五十嵐流の家元が来ると話した。
由花が驚いて立ち止まり、俺たちの顔を不安げに見た。
「由花は俺にエスコートされとけ」



