運転手はいなかったので、そのままタクシーを呼んでもらい、車に乗った。
 私を抱きよせ、一緒にタクシーへ乗りこんだ。そして家まで送ってくれた。

 タクシーを通りに待たせて、一緒に門をくぐり、歩いていつもの玄関先まで送ってくれた。

 「送り狼になりたいところだが、今そうなるとアメリカへ行きたくなくなる。帰ってきてからにするからな」

 そう言って、軽くおでこにキスを落とした。私はそんな彼をじっと見上げた。すると彼は私の目を見て軽くため息を落とした。そして急に顎をつかまれた。腕が腰に回り、気付けば唇が重なった。

 「……ん、はあ」

 唇が一瞬離れて息を吐いた。すると、また何度も角度を変えて軽いキスを繰り返した。

 「ここまでだ。本当に狼になりそうだ。その目で見られると欲しくなる」

 そう言って、まぶたの上にキスを落とし、後ろを向いて帰って行った。