「由花。俺は君の名前を聞いてすぐ思い出したよ。あのとき、君は俺に話してくれたんだよ。自由に花を活けるという意味の名前だと……」
「……え?」
「あのとき泣いていた小学生の女の子が君だとわかったが、だから付き合いたいと思ったわけではない。俺と真正面から向き合ってくれた君だから付き合いたいと思ったんだ」
「でも、教えてくれても良かったのに……」
「そうだな。でも俺を見ても君は気付かない。覚えていないんだとわかったし、ご両親の辛い記憶と重なるかもしれないから言わない方がいいだろうと思っていたんだ」
「そうだったのね」
「当時俺はこの仕事をやるべきか、父のこともあってとても迷っていた。小学生の君になぜだか俺はそのことを話してしまったんだ。君は一生懸命話を聞いてくれた。そしてお兄ちゃんも一緒におうちの仕事しようよと言ってくれたんだ」
「ごめんなさい。詳しい内容はもう覚えていないの。ただ、一緒に頑張ろうと言ってくれたのは覚えてる」



