私は青くなった。理由などとても話せない。個人的理由と中田さんがおっしゃったぐらいだ。
「私も詳しくは聞いておりませんが、その時だけだったと思います」
「それはそうでしょうね。しかも招待客だった神田さんと一悶着起こしたらしいじゃない、聞いたわよ。要するに、ツインスターホテルの中田オーナーに乗り換えたからじゃないの?」
私はびっくりして、五十嵐流家元を見た。
「違います!中田オーナーにも失礼ですから、憶測で変なことをお話しになるのはやめて下さい」
「どうかしらねえ。神田さんはあなたに執着してるらしいじゃない。いいわねえ、若くて可愛いとお仕事がたくさん来て。でもいい気にならないことね。本来うちがやっていたところにスポットでもあなたが平気で入ること自体許せないわ。同じ事を他の流派の牙城でもやってみたら?どうなるか楽しみね」
周りはこそこそと遠巻きにこちらを見ながら話している。



