「……お前、どうして急にここでそういうこと言う?」
「玖生さんこそ、朝からダメでしょ。いっぱい働いて疲れたら抱きしめてあげるって言ったのよ」
彼は黙ったまま私を抱きしめ、あのときのように首筋にキスをした。
「……あっ、だめ」
「その声……反則だ」
私を見る目は男の欲望に満ちた目だった。私は目をそらすことができずに、息をのんだ。
だが、彼はそれ以上何もしなかった。そして黙って私の手を引いて部屋を出ると、すぐに私をエレベーターに放り込んだ。
「夜楽しみにしてる。連絡してこい」
そう言って、扉を閉められた。
火照った顔を見られないように、下を向きながら急いで片付けると帰った。



