「わかった。金曜日だったよな。時間わかったら連絡くれ。迎えをやる」
「うん。ありがとう」
車のライトが見える。玖生さんはわたしの頭を撫でると帰って行った。
何かやっぱりあったんだろう。元気がない。わかっていながら、深く聞く権利がないと自分で線を引いてしまった。
彼の私を想う気持ちは痛いほどわかっている。そして私も……もう彼のことが好きだ。彼に抱きしめられても、キスされても嫌だとは思わない。何よりの証拠だ。
でも清家御曹司の彼と付き合いはじめたとして、結婚はできないかもしれない。あんな辛い思いはもうこりごりだ。
祖母の病気やこれからのこと、彼との身分差を考えるとふたりの気持ちだけでうまくいくとは到底思えない。
元々、大奥様は私を見合いとは名ばかりの、女友達でいいからと彼に紹介したのだ。



