「そうだ、家元継承の件はそういったことに詳しい人をそのうち会わせるように手配している。もう少し待ってくれ」
「それも大丈夫。こちらでも動いているから。ねえ、玖生さん、疲れてるでしょ?今日はわざわざ私の顔を見に来てくれたの?無理しないでいいのよ。忙しいお仕事なのに……メールで大丈夫だから、これからはそうしてね」
そう言った私の顔を彼はまたじっと見た。そして、急に手を引かれ彼の腕の中に抱きしめられた。
玖生さんの香水に包まれた。何度か抱きしめられたせいで、驚きもない。この香りで安心するようになってしまった。
「どうしたの?ねえ……」
「少しだけこのままで……疲れが取れるんだ」
「何それ?私ってそんな力があるの?じゃあ……どうぞ」
私は彼の身体に腕を回して抱き返してあげた。
すると、彼はビクッとして私をぎゅっと抱きしめ、私の首筋に温かい感触を残した。



