祖父は父を睨んで言い放った。
「馬鹿者。お前の責任など何の意味もないわ。玖生。とりあえず海の向こうは準備や根回しもあるからお前のいいようにはできない。そのつもりでおれ」
わかっている。国内ではないからこそ、時差もあり勝手はできない。フライトの予定もずらすのは難しいのだ。
「……わかりました」
「ただ、縁談はお前に任せよう。あちらで杉原社長や亜紀さんとよく話し合え。特に亜紀さんは乗り気のようだぞ。彼女は素質や背景は満点だ。もちろん見た目も美しい。お前との相性も悪くないようだし、わしは志津の紹介した娘さんよりお前にはいいと思う」
「結婚だけは自分の意思で決めます。やり直しをする気はないので」
「ああ、そうしろ。いいですよね、父さん」
父が祖父をなだめてくれた。苦い顔をしている祖父を尻目に席を立つ。



