「……」
「玖生。アメリカで一緒に仕事をしていた杉原社長から亜紀さんと一緒にならないかと正式に縁談の申し入れがあった。彼女は昔からわしもよく知っているし、父親である社長も優れた人物。親子共々お前とは縁があるようだしな。仲もいいだろう」
「学生の頃からの知り合いですので、まあ気心がしれていたのでそう見えたのかもしれません。ですが……」
祖父が言った。
「とりあえず、一ヶ月程度アメリカを拠点に仕事をして、わしの後任として回ってきてもらいたい。国内はお前ということですでに根回しはすんでいるが、あちらは取引先を納得させねばならん」
「今でなくてはだめですか?もう少し、せめて一ヶ月程度遅らせて欲しいのです」
「あちらの話では二週間後くらいには準備ができると言っていた。それでどうだ?」
祖父の話はわかる。だが、今は由花の側にいてやりたい。
「その娘さんのためか?身内がいないようだしな……」
俺が黙っているのを見て、父が祖父に言った。
「父さん。玖生が継いでくれるというなら多少のわがままは多めに見てやって下さい。私が継がないということで許してもらうんですから。何かあれば私が責任をとりましょう」



